- 我々は猫である ① -

      我々は猫である
      我々は猫である

 

我々は猫である。名前は、あまた有る。


今は、博多駅近くの公園をねぐらにしていて、色んな人間が、朝に夕に、食べ物をもって来る。

 

そして、ミーとかタカシとか好き勝手に呼びかける。

 

 

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しかし、ミーはいかんな。


「ミー」と言えば、ピンクレディを思い浮かべる。本名、「根本美鶴」。だからミー、女の愛称だ。もちろん、俺の母親が、その母親から聞かされた話だが…

 

この輝くふぐりが見えんのか。光男とかミノルとか言う名前の男を、ミーなんて呼ばないだろう。まぁ、どうでもいいが、とにかく俺は好かぬ。

そんな人間たちの多くは、女だ。二十代、三十代が多いが、時々、男もやってくる。

 

ひな祭りの頃だったか、五十代のサラリーマンとおぼしき男がやってきた。
親愛の笑みを浮かべ、ツッツッツッと呼ぶ。

 

失敬な野郎だ、礼儀を知らん。おまけに手ぶらだ。何とも、ものの分からん奴である。

相手にしてやらなかったら、淋しげな表情を浮かべて、とぼとぼと去って行った。

 

 

数日後、また、その男がやってきた。少しばかり、自信を漂わせている。


袈裟懸けの小さなバッグから袋を取り出して開けた。見るとニボシだ。

ふん、しけた野郎だ。この年代の人間の男どもは、猫はニボシが好きと思い込んでる。

まるで分かってない。

 

腹が減っていたから、食べてやったが頭は食わない。美味くないのだ。
それでも男は、妙に満足したような顔をして、駅に向かって歩いて行った。

一時ほどして、また、その男がやって来た。さっきと同じように、バッグからニボシを取り出した。

 

こいつまるで分かってないな、さっきは腹が減っていたから食べてやったんだ。
ニボシばかり食えるか。ぷいと横を向いた。すると、また、しょんぼり去って行った。

 

 

そして数日後、またまた、その男がやって来た。


先だって来た時より、もっと自信に満ちた顔をしている。妙な野郎だ。
黒いカバンから、箱を取り出した。箱には「シーバ (Sheba) シーバデュオ 鶏ささみ味と海のセレクション 」と。


ドライフードだな。嫌いではないが、堅いしな… まぁ、味が色々あるので飽きないのはいい。

 

銭、使ったのか…

こいつ、少しは見どころがある。


特別に言ってやった、「 すまんな 」。