小泉八雲と日本の怪談  - 怪談とホラー vol.1 -

 

夏の夜、父母が語り聴かせた日本の怪談・奇談。

「耳無芳一」、「雪女」、「ろくろ首」 …et


小泉八雲の怪談集だったのだろう。

 

物心つき始めたばかりの子供の鼻腔に吹き込まれた、日本的な物恐ろしさ…

 

 

<「 映画 「 マタンゴ 」と「 ゴケミドロ 」 ー 怪談とホラー vol.2 」はこちら>

 

 

 

日本の怪談と言えば、怖さや怪しさを感じさせる物語の総称。

 

幽霊、妖怪、怪物、また、怪奇現象に関する民話伝説、さらには、神話の中にも様々に見られる。

 

有名なのは、江戸後期、上田秋成によって著わされた「雨月物語」であろう。

 

怨念、亡霊、悲歎など、日常の闇に潜む異界を描き出した。

 

そして、明治に入ると、小泉八雲が登場する。

 

- ラフカディオ・ハーン -

   ラフカディオ・ハーン
   ラフカディオ・ハーン

 

近代国家を目指し、西欧化を進める明治の日本。

 

明治23年、アメリカ合衆国の雑誌社の依頼を受け、日本についてのルポを書くために来日したラフカディオ・ハーン、アイルランド人の父、ギリシャ人を母にもつ。


来日後まもなく、日本人の生き方、物の感じ方に自分との深い共通性を感じたラフカディオは、帰国することなく、日本で英語教師として教鞭を執るようになる。

 

やがて、日本人の妻をめとり、日本をこよなく愛したラフカディオは、「小泉八雲」として日本に帰化する。

 

そして、教師としての生活のかたわら、近代化の名の下に忘れられていく日本の古い伝説や奇談、とりわけ怪談に強い関心を持ち、それを掘り起しまとめていくのである。

 

もとよりそれらは、彼の創作ではなく日本の古典や中国の説話からの再話、作り直しであるが、彼の感性のフィルターを通し、かつ、徹底した文章の練り上げが施されたことにより、文学的な結晶体となったのである。

 

 

1965年、東宝映画「怪談」が公開された。

原作は小泉八雲の怪談で第1話「黒髪」、第2話「雪女」、第3話「耳無芳一の話」第4「茶碗の中」の4話からなる約180分のオムニバス。

 

小学校に入学して間もない頃、父母に連れられ近くの映画館のロードショーで恐怖映画というものを初めて観たのが、この「怪談」だった。

 

当然、それぞれの主題や暗喩を理解できる年齢ではなかったが、とにかく怖かったことだけは50年を経た今でもはっきりと記憶に残っている。

 

昨今のホラーとは、全く精神領域の異なる恐れ。

汎神論的日常における、因果応報、怨霊、勧善懲悪。

日本人の心の奥深くに流れる、儒教・仏教・神道が渾然となった世界観。

 

今こそ、もう一度じっくり、行間を読んでみよう。