-オヤジ達のタコぶつ -

 

社会人駆け出しの頃、” 軽く、一杯やらないか ” と上司に誘われた。

付いていった先は、寿司屋だった。(へぇ…、寿司屋で飲むのか…)

 

カウンターに座ると、

” 大将、タコぶつね。それと、キュウリのぬか漬けもね … ”

 

” タコぶつ ” ……?  自分の語彙にない、使ったことのない言葉。

とても、新鮮な響だった。

 

出てきたものは、タコのぶつ切りだった。

へぇー、大人って、こんな風に飲むのか …

 

 

ところで、昨今、コミュニティウェブサイトでは、「タコぶつと□□の炒め物」「タコぶつの▲▲サラダ」なんて料理名をよく見かける。なんか…、変だ。

 

そもそも、『タコぶつ』は、タコを薄く引いた「タコ刺し」に対し、ぶつ切りにした「タコのぶつ切り」が略されて『タコぶつ』となり、寿司屋や飲み屋から巷に広まったもの。

 

サイト上の料理を見ると、普通のタコ料理で、「ぶつ」を付ける意味は … ?

 

 

トマトを例に取ると、「トマトスライス」がよく似ている。

料理名として、普及している。

 

トマトの切り方は、くし切り、輪切り、半月切り、ざく切り …etc

トマトスライスの場合は、輪切りか半月切りだろう。

 

そんなトマトだが、「トマトスライス」以外、料理名に切り方なんて付けないのだ。

 

 

料理をなりわいとした世界で、特別の場合を除いて、『タコぶつ』を料理名に使うことは先ずない。

そんな名前を付けたら、浅学がバレ、失笑をかってしまう。

 

一所懸命、語るほどでもないので、本日はここまで。

 

 

今宵は、スーパーで買った北海道産のタコ。

当時の雰囲気で、自作のぬか漬けを添えた。

 

 

ところで、思うのは、何故、上司が自分を連れて行ったかだ。

今だから、解る。

 

その上司、行きつけのスナックがあって、開店までの時間調整に付き合わせたに違いない。

何しろ、タコとぬか漬け、ビール1本と銚子3本だけ。

寿司は、喰わせてくれなかった。

 

今の自分ならどうする … ?

そんなケチなことはしませんよ。

茶碗蒸しくらいは喰わせるね。