強敵 / ふと想起される言葉 vol. 38

 

  

一つの花に蝶と蜘蛛

 

子蜘蛛は花を守り顔

子蝶は花に酔い顔に

舞えども舞えどもすべぞなき

 

花は子蜘蛛のためならば

子蝶の舞をいかにせむ

花は子蝶のためならば

子蜘蛛の糸をいかにせむ

 

やがて一つの花散りて

子蜘蛛はそこに眠れども

羽翼も軽き子蝶こそ

いずこともなくうせにけれ 

 

  ≪『 強敵 』 島崎藤村「若菜集」≫

 

 

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