馴染みの小料理屋に入ると、大将がキッチン用の毛抜きを握って、さばいたイカから何かを取り出している。
” 何やってんの ?”
” これ見てよ ”
水を張った小皿の中に、真っ白い糸ミミズのようなものがウネウネと動いている。
” アニサキスだよ ”
” このイカ、刺身で出そうと思ってたんだけどね … ”
そんなことを目にしてから数日経ったある朝、胃がとんでもなく痛んだ。
” 昨日、居酒屋で鰺の刺身たべたけど、もしかしてアニサキス ? ”
病院に駆け込み、胃カメラを飲んだが何もなし。
単なる飲み過ぎによる胃炎だった。
随分、昔の話だ。
近頃、アニサキスのことがちょくちょく話題になる。
あるTV番組で、
・ アニサキスを体内に入れて食中毒になるかは体質にもよる
・ (食中毒に)なる人とならない人がいるのはアレルギーだからです
・ するとアナウンサーは「体質によるのか… 」 と
驚きましたね~
キー局の番組とは思えない。
私は、医師でもなけれな専門家でもない素人だけど、これは誤った認識を植え付けかねない言葉だ。
アニサキス症とアニサキスアレルギーは、同じではないのです。
内閣府「食品安全委員会」の資料によれば、
アニキサス症は、アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含む)で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒を引き起こすもの。
急性胃アニキサス症は、アニサキスが寄生した魚介類を生で食べて数時間後から十数時間後にみぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生る。
急性腸アニサキス症は、十数時間後から激しい下腹部痛、腹膜炎症状などを示す。
これらの急性の症状は、アニサキスが、胃壁、腸壁に刺入することで生じる。
また、アニサキスの再感染によるアレルギー反応が関係している場合もあると考えられている。
※ ※ ※ ※
一方、アニサキスアレルギーは、
アニサキスを抗原(アレルゲン)として生じるアレルギーのこと。
具体的な症状としては、食物摂取後15~30分で蕁麻疹、血管性浮腫、気管支喘息、腹痛、重篤な場合はアナフィラキシーショックを呈する。
アニサキスアレルギーは生きた虫体によるアニサキス症に伴って起きる場合と、
虫体が死んだ状態の魚介類(凍結保存あるいは加熱調理)の摂取により、食物アレルギーと同様の機序で起きる場合の2通りがあると考えられている。
つまり生きたアニサキスだけでなく、アニサキスの死骸でもアレルギー反応が出るということ。
アニサキスの成分に反応しているので、刺身の中にアニサキスがいるかいないか、アニサキスが生きているか死骸になっているかは関係がない。アニサキス成分が入っているかいないかだ。
加熱や冷凍でアレルギー性が減弱することもあると言われているが、個人差が大きく全く安全とは言い切れない。
いずれにせよ、生きたアニサキスを体内に入れて、症状が出るかどうかは「体質」なんてのはとんでもない陳弁だ。
※ ※ ※ ※
そんなこんなのアニサキス、じゃ、刺身は食べない方が … ?
サーモン、タイ、ブリ、カンパチは、ほぼほぼ大丈夫。そして、養殖魚。
「養殖魚」の餌は、冷凍か乾燥処理の過程で、オキアミなどの餌内のアニサキスは死んでおり、エサから魚にアニサキスが移ることはなくて安全ということらしい。
さりとて、博多と言ったら名物の「ゴマサバ」。
サバどうなのか。
大丈夫なのです !!!
アニサキスは遺伝子の違いで約10種類に分類されるそうだ。
東京都健康安全研究センターの調査によると、築地市場(東京)に集まる全国の港で水揚げされたサバを調べた結果、高知県から青森県までの太平洋側のサバは8割以上がアニサキス・シンプレックス・センス・ストリクト(シンプレックス)。
一方、長崎県から石川県の日本海側のサバは8割以上がアニサキス・ピグレフィー(ピグレフィー)であることが判明した。
そして、内臓に寄生後、肉質部にまで潜り込む「移行率」はシンプレックス約11%に対し、ピグレフィーが0.1%と大きく異なることも明らかになった。
信頼できる店で提供される、新鮮な日本海産の魚なら先ず間違いはない。
今宵は、冷えた地酒とゴマサバで一杯といきたいな …
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