『 桜並木 』は、16日に開業した西鉄大牟田線の新駅である。
一方、『 千代県庁口 』は、ご存じのとおり、福岡市営地下鉄箱崎線の駅である。
先ず、桜並木駅のこと。
報道によれば、新駅名の決定にあたっては、地元から様々な案が出されたという。
その中には、『 雑餉隈 』をベースに「新」や「南」を付けるという案もあったらしい。
ちなみに、西鉄大牟田線の『 大橋 』の隣が『 井尻 』、そして次が『 雑餉隈 』だ。
賃貸マンションの家賃で言えば、『 大橋 』から『 井尻 』でグッと下がり、さらに『 雑餉隈 』でまた下がる。天神からの距離の問題ではないらしい。
『 大橋 』と、『 井尻 』『 雑餉隈 』の持つ地域的なイメージの差だという。
いずれにしろ、どの案に決定しても遺恨が残ったかも知れないと地元の人は語る。
結局、一般公募の中から、市と地元代表が協議し『 桜並木駅 』に決定した。
「 … 静寂な町をイメージするだろう。マンションの冠名にもしやすく、西鉄や不動産業界は安心しただろう」と。
次に、『 千代県庁口 』の話だ。
かつて、福岡市営地下鉄の整備に携わった元市交通局の幹部が話してくれた。
『 千代県庁口 』の駅名は、市側の案では、当初は『 千代町 』だったという。
これに地元が異を唱えた。
かつて、千代町は福岡市民からよい印象を持たれていない地域であった。
千代町中学校バスケ部出身の友人は、対外試合で、” 千代中か … ” と訳もなく蔑まれ、嫌な思いをしたことが度々あったという。
そうしたこともあってか、地元では何とかイメージの向上を図りたいと思っていたのだろう。
で、「千代」の下に堅いイメージのある「 県庁 」という言葉を付けて『 千代県庁口 』となったという。
確かに、「県庁口」が耳に残る。
これによって、千代町の不動産の物件表記は、” 地下鉄『 千代県庁口 』徒歩○分 ” となって、実際に、不動産の価格が上昇したという。
これにまつわる話が、もう一つある。
『 千代県庁口駅 』の路線名は、『 箱崎線 』である。
この路線名も、当初案は『 貝塚線 』だったという。
この案に、福岡市議会の重鎮議員一人が強く反対した。
理由は、「塚」が付くのは縁起がよくない、路線各駅のイメージも悪くなるという。
たしかに、「塚」には、土を小高く盛って築いた墓、また、一般に墓の意味がある。
しかし、『 貝塚 』は違う。
貝塚は、先史時代、貝類の常食に適した地に居住する人々が、日々大量に出る貝殻などの様々な生活廃棄物を長年にわたって投棄し続けることで、それらが累積した場所のことをいう。「貝塚」の地名は、古代史に由来するものだ。
そう説明しても、頑として聞き入れず、結局「箱崎線」になったという。
※ ※ ※
新しい駅の名前や地名の決定に際しては、そこに住む人々の考えが様々に交錯する。
これに関係者や企業・団体の思惑が加わるとなおさらだ。
とかく、人の世は難しい。
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