私の親父は、生涯、喫煙者だった。
テーブルには、いつも、灰皿、タバコ、ライターなどを入れた箱が置かれていた。
親父はそれを『 煙草盆 』と呼んでいたが、本来の『 煙草盆 』とは異なる。
『 煙草盆 』は、煙管(きせる)で、刻みたばこを吸う際に使う火入(ひいれ)、灰吹(はいふき)、煙草入(たばこいれ)、香箸(こうばし)など、喫煙具一式を納めておく道具のことをいう。
おそらく、煙管でタバコを吸っていた時代があって、後年、今日謂う「 紙巻きタバコ(シガレット)」に変わっても、同じように『 煙草盆 』と呼んでいたのだと思う。
そんな親父の影響で、タバコの道具を入れたものを私も『 煙草盆 』と呼ぶ。
今日、紙巻きタバコを吸うのに「儀式」はない。
パッケージから取り出して、ライターで火を付けるだけだ。
が『 手巻きタバコ 』には、刻み煙草と同様にそれなりの儀式がある。
ローラーにシャグ(たばこの葉)とフィルターを入れ、巻紙を挟んで手で回して手巻きタバコをこしらえる。
そして、手巻き煙草には選択がある。
・ シャグの選択、ブレンド
・ 巻紙の素材、サイズの選択
・ フィルターの選択
・ 巻き方の選択 … etc .
人様にあてがわれるものではない、自分だけの世界を見つける道でもある。
手巻きタバコの楽しみ方を教えてくれたのが、この『 手巻きタバコ STYLE BOOK 』だ。
サブタイトルは「The ZIG-ZAG BIBLE」。
バイブルはちょっと言い過ぎかもしれないが、手巻きタバコの魅力や向き合い方を教えてくれる。
そして、本当の意味での「 … らしさ」を考えさせてくれる。
ところで、昨今、口コミサイト全盛の時代。
食べログ、ぐるなび、ホットペッパー … etc .
『 孤独のグルメ 』とは、対極の世界。
試行錯誤、挑戦と発見こそが自己確立の第一歩だ。
他人様の言葉に右往左往するのは愚かしい。
己の感性・感覚を放棄した大衆社会 …
矜持のない日本人 …
そんなことを思いながら、煙草を巻く。
革敷を広げ、愛用の「 巻正『 黒鉄 』 Classic Rolling Box」のフタを開ける。
ベルトにシャグとフィルターを入れ、巻紙を挿入。
フタを閉じれば1本あがり。
今日のシャグは『 ドミンゴ バニラ 』、フィルターはスリム。
巻紙は、燃焼剤が使われていないオーガニック の「OCB」、体にいい(?) のです。
手巻きタバコの味と香りは濃厚で、普通のシガレットと比べると、吸う本数がぐっと少なくなる。
家事の合間に10本巻いた。
この春からのルーティンだ。
<「 巻正『 黒鉄 』 Classic Rolling Box & クラシックベルト - 手巻きたばこを愉しむ vol. 8- 」はこちら>
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